インク壺 コラム第3回

たぬき

実家の床の間に、物心ついたときより鎮座しておりました、たぬきの置物がありました。

四分一打出 狸公 香合 河内宗明(作)
四分一打出 狸公 香合
河内宗明(作)

顔は小さくリアルで口も少し開いており、そこから歯並びまで見え、空を見上げており、お腹は満月のように大きく、毛並みは一本一本まで表現された焼き物製の座ったたぬきでした。


中学、高校の頃には少しは骨董が解るようになり、たぬきの出生を調べてみますと幕末の名工、仁阿彌道八のお得意のたぬきでした。 背中に穴が開いておりそこから炭を入れて、手あぶりで使用する置物でした。

それがいつのまにか床の間から玄関に移り、そこでも長い間座っておりました。 昨年帰省したとき玄関がいつもと何か違うように感じ、よくよく見るとたぬきに異変がおきておりました。

顔は丸く変わり、毛並みは無くなり、お腹は小さくなり、座っていたはずが立ち上がっており、おまけに徳利まで持っておりました。 四分一打出 狸公 香合 河内宗明(作)

家のものに聞くといつの間にか変わっていたとの事、頭の黒い二本足で歩く狸にすっかり化かされてしまった次第です。

ちなみに新しい信楽製の新品のたぬきでした。

あーー、道八のたぬきはいったいどこへ;;;;;;;;