インク壺 コラム第9回


『蜩ノ記』

時代劇ファンの私が待望していた映画『蜩ノ記』です。
お家が第一の時代に生きる武士の生き様を美しい映像とゆっくりとしたテンポで描いた作品でした。
全体的に台詞が少ないので、映像をじっくりと楽しめました。

時代設定は江戸後期で、画面の調度品に仕事柄目がいきますが、監督は黒沢組の後継者。本物を使用し華美にならず違和感なく見られます。
それに、現代では見ることのできない四季を美しく表現していて、衣装も人物設定とその折々のシーンに合わせております。
食事や礼、元服シーンの小笠原礼法の所作も美しく、映画の質を高めております。
ドラマ『タイガー&ドラゴン』以来、「役者・岡田准一」に注目しておりましたが、大河ドラマ『黒田官兵衛』はじめ、近年の役の広がりと成長には目を瞠るばかりです。
この役の居合もそれ相当のレベルで、前準備に要した時を感じました。

観客は時代劇という事もあり、年齢層が高く(私も)、この映画のもう一つのテーマであろう「縁(えにし)」を深く考えさせられる上でも、出来れば若い人達も見てくれたら良いのになーーと。
現代とは違う時代の世界もこれからの人生、きっと参考になるのではないかと思います。
「カナカナカナ……」と鳴く蜩同様、役目を終わり消え行くのみのエンディングシーンも一抹の寂しさを感じさせます。
それにしても、時代と風景と武士に溶け込んだ役所さんは背中で演じられる数少ない役者ですね!
佐々木