美術品の扱いと保存 1

今回は掛軸の扱いと保存をお話しいたしたいと思います。

昔から日本家屋には床の間があり四季折々の掛軸が掛けられておりました。 普通のお宅で20本ぐらい収集家や茶家では200本ぐらいの掛軸がございます。 家々により掛ける期間が2週間から長いお宅では1年間掛けっぱなしで殆ど壁掛になっている軸もございます。 当然痛み、ヤケ、汚れ等で状態は酷くなるばかりです。 皆様はそうならないようにお願いしたいと思います。 順を追って説明します。


「七夕水辺望天河」
鳥丸光栄(卿)書 懐紙
「七夕水辺望天河」

掛ける期間

最大2週間ぐらいと言われております。空調湿度管理の行き届いた美術館等は40日ほどは良い状態が保たれます。

掛ける場所

普通の床の間は直射日光が当たらない様に設計されておりますが他の場所に掛ける場合は直射日光、風、煙(煙草・調理を含む)、温度湿度変化の多い場所等は避けた方が宜しいです。

収納時の注意点

重要な事は壁から湿気が無くなる日を選んで収納してください。晴れて乾燥した日が2日続いた時がベストです。その時点で掛軸からも湿気が飛んでおります。

「柳緑花紅」
大徳寺505世十代管長
森山歓渓紹忻(書)
「柳緑花紅」

巻方の注意点

まず毛ばたきでほこりを払い、軸先を持ち、巻がずれないように正確に巻きます。この時紙の部分を持って巻くことは厳禁です。折れの原因になります。それと決してきつく巻かないでください。これも折れ、シワの原因になり掛りが悪くなります。風帯も決して一緒に巻かないで必ず横に折り収納してください。

保存場所

当然ですが温度変化の少ない場所で湿度の高くない場所が適しております。

保存方法

ナフタリン、樟脳はシミの原因等や絵の具に悪影響を与える場合がありますので防虫香(松栄堂、鳩居堂等で1個200円ぐらいまでで売っております。)が宜しいかと思います。この防虫香も永久ではありません。虫干しの時に交換が宜しいでしょう。
箱は桐箱が良いです。箱が紙箱ですと密封性がなく防虫香も効かなく湿気も入ります。

虫干し方法

最低年1回は虫干しを行ってください。(定期的に掛けて手入れの良い軸はこの限りではありません。)
良く乾燥した日を選び直射日光に当たらないように吊るして干してください
この場合大変重要なポイントがございます。掛軸の箱も開けて干すことです。殆どの方が箱は干してなく中の湿気が残ったまま虫干した軸を入れることになります。紙に巻いてあれば紙も干してください。
この巻紙も大切なポイントがございます。変色したりシミになっている紙は決して使用しないでください。
カビの胞子が付いていることがあり掛軸に付いてしまいカビ、シミの原因になる事がございます。
一度付いた折れたシミはそのままでは直りません。表具をバラバラにしてから洗い、最初から仕立て直さなければなりません。
時間とお金が掛りますのでくれぐれもご注意ください。 最後に茶会、茶事の時に使用する軸は前もって掛けて掛りを良くしておいてください。席主の最低限のマナーです。

古美術ささき  佐々木 一